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様々な方から、お気に入りのレシピを教えていただく機会が多い。
それには決まって忘れ難い過去も重なっていて、
アルバムの頁をそっと広げるように丁寧に手順を伝えてくださるのだ。

江戸末期生まれのハイカラおばあちゃまが作ったという「パンケイク」(発音も本場仕込み)。
明治生まれの祖父が植えた庭の檸檬をもぎ取り、亡き母が拵えた甘い甘いレモンケーキ。
声を耳にしながら、ペンを走らせると記憶の中の風景も一緒に眺めている心地になる。

今日の林檎ケーキは、イギリスのコッツウオルズ地方に長く暮らした方のレシピ。
卵をしっかり泡立て、型から溢れるほどの林檎をほんの少しの粉で繋ぐ滑らかな仕上がり。
ふんわりと笑って、ポットには必ずたっぷりの紅茶を用意してね、と。

もうそのひとはいない。
オーブンから立ちこめる香りに、きれいな銀髪に見惚れ乍ら話を聞いたあの午後が透けて見える。