起ちなはれ

もし 人が 今でも 万物の霊長やというのやったら こんな酷たらしい毒だらけの世の中 ひっくり返さなあきまへん  

何が文明や 

蝶やとんぼや蛍や しじみや田螺やがんや燕や ドジョウやメダカやゲンゴローやイモリや 数も知れん生きもの殺しておいて

首は坐らん目は見えん 耳は聞こえん口きけん 味は分からん手で持てん足で歩けん

そんな苦しみを水俣の赤ちゃんに押しつけといて 大腸菌かてすめん海にしてしもて なにが高度成長や 百年に一度の万博や

貧乏がなんどす え 思い出しなはれ 知らん人には 今どきの若い者(もん)には教えてあげなはれ

おいもの葉ァ食べたかて 生きてきたやおへんか そのかわりに 青い空にはまぶいお陽(ひい)さん せみしぐれの樹陰は風の涼しうて あの緑と草いきれときれいな川と池と海と‥‥‥

そや 昭和二十年敗戦の夏 大阪湾の芦屋の浜で 今はチョコレートみたいな海になってる あの大阪湾で 小っちゃい鯛やら河豚やら 手で取れた 

そんな中で なあ にんげんは ぎょう山の生類といっしょに生きておったんやて

教えてあげなはれ 思い出さんかい

もし あんたが 人やったら 起ちなはれ 戦いなはれ 

公害戦争や 原発戦争やでえ 戦争のきらいなわし等のやる戦争や 人間最後の戦争や 正念場や 

勝たな あかん 勝ちぬかな 子どものために 親のために 先祖のために そうしてこの自分自身のために 一度しかない人生のために

‥‥‥負けたら?

負けたら一巻の終りや 生殺しの毒地獄や 

数も知れんほどぎょう山 お仲間の生類殺した霊長はんはなあ そのかわりに ギッチョギッチョした油やら エントツやらクルマやらテレビやら 数も知れんほどぎょう山のガラクタ残して

この地球から 綺麗な青い星から 消えてしまうだけのハナシや 

      砂田明 (1970年)