林檎の始まりは、紅玉から。
赤くて、丸くて、すべすべしていて。薫りも味も、掌にのせた重みもすべて好ましい。
つらさ、くるしさ、さみしさに寄り添い照らす、燈火のような果実。
古今東西の林檎にまつわる説話や詩歌をつらつら読むのすら嬉しい。
きっと、林檎が現れる時節が、心底待ち遠しいから。
長かった夏を見送り、冬支度にむけて刻々と呼吸を整える日々はいとおしい。
しかしながら、豊穣と天災は背中合わせなのありましょうか。
みなさまのお住まいの街は、ご無事でしょうか。
どうか安らかな夜をお過ごしになられますように、奈良より案じております。