雄吉さんが逝って、一年経つ。
いつも空を見上げていた。
賑わう客間から、すっと離れて渡り廊下へでると
階段に腰を下ろして庭の上に広がる四角い空を、ぽやっと眺めている。
どんなに大勢で語らっていても、端の方で口数少なく俯く子へ目が届く。
大所帯を束ねるひとの眼差しの広さと細やかさが、忘れ難い。
故郷を捨てざるを得なかった人々の、震える声を聴いていた雄吉さん。
亡き者の哀しみと、怒りと、絶望と。底から湧き上がる人間の勁さと。
あの舞台が、今世をどう織り上げてゆくのか、もうすこし辿りたかった。
おーい。 
其処からは何がみえますか。
おーい。